偉大な山はまだまだ存在する。
「行きたい店がある」
相方Mと朝一仕事終わりで合流した私は、大阪駅前第三ビルへ連れていかれた。
数多くの居酒屋がひしめき合う地下。昼間はランチ競争になる。
店の名前は「さくら月 田ごと」。
昭和の雰囲気が残った店内に足を踏み入れると、壁には
手書きで若干の統一感がある、紙のメニューが所狭しと貼られまくっている。
そして紙の端っこが浮きまくる。
「近々剥がれるかもしれない」危機感を煽る。
奥の天井には神棚、そして陶器の招き猫。
絵に書いたような招き猫を久しぶりに見た。
神棚のすぐ横にもメニューが貼られ、まるでメニューの数々が
神様へのお供えにも見える。
「唐揚げマウンテン2つ」
マ ウ ン テ ン?
私の好みとか食べたいものとか他にメニューがあるとか
そういうことも一切関係なく注文されて、出てきたお茶は
コップと湯のみに入れられていた。一見、あたたかいお茶と冷たいお茶か?と
思うがもちろんお茶は同じ冷たいもの。食器に統一感はないようだ。
だがそれがいい。
しばらくすると、先に小鉢やご飯が運ばれてくる。
ご飯はおかわりできると念押しされた少し大きめの丼、
冷奴、味噌汁。
メインは後で来るようだ。
そして、問題の山が我々の前に姿を表した。
積み上げられた大ぶりの唐揚げ。なにこれ。私食べきれる?
「ご飯はおかわりできますんで」
大切なことなんで2回言われた。
横には小皿で塩が付いている。薄味なのかな?いただきます。
一口食べて、かなりレベルの高い唐揚げだと気がついた。
揚げたてではあるけど、口の中がやけどするほどではない。
ほどよく暖かくジューシー。そのままでも充分に味がついている。
タレがかかっているように見えるが、そんなに濃い味ではない。
よくよく見てみると、七味ミックスっぽいスパイスがかけられていた。
ご飯がすすむ。唐揚げの下にはサラダ菜が敷かれており、少しだけ
マヨネーズが絞られている。
そのままでも、塩でも、マヨネーズでも、というところか。
個人的にはそのままで充分美味しくいただける。
元々ご飯が盛られているのが丼なので食べても食べても
なかなかご飯が減らないが、アレだけ盛られた唐揚げには
これくらいでないと歯が立たないだろう。
唐揚げを半分くらいご飯と共に平らげておかわりをお願いする。
ひたすら唐揚げを食べていた印象が強いので、味噌汁と冷奴の
存在がほとんど頭に残っていない。ごく普通だったかと。
実は唐揚げが運ばれてきてからすぐくらいのタイミングで
隣に座った男性1、女性3の四人グループがいた。
その人達は、「唐揚げ1、モモ3」と頼んでいる。
モモ?
唐揚げとは言わずと知れた唐揚げマウンテンのことだ。
食事をしながら運ばれてきた問題の「モモ」を横目で見たところ。
「唐揚げマウンテン」のかわりに「モモ肉川」が繰り広げられていた。
焼いた鶏もも肉が細長い器に整然と並べて盛られている。
これもかなりの量だと思うぞ…
「ご飯はおかわりできますんで」
大切な一言を店員は忘れない。使命感すら漂う。
店を出た時。
お腹と、「唐揚げ心」はこの上なく満たされていた。
そもそも相方Mがなぜこの店を選んだかというと、
「仕事先で唐揚げの話が出て、どーーーーーーしても唐揚げ食べたかった」
ということらしい。
今度来た時は、「モモ肉川」を食べてみたい。
しばらくの間、唐揚げは食べなくてもよさそうだ。
それくらい、唐揚げに満たされたい時におすすめの店である。
2015.9.2