食物連鎖の頂をめざせ。ジビエ×熟成肉、パンとサーカス@新宿
「肉食べにいこうぜ」
そう誘われたとき、君は何を想像するだろう。
カルビ? タン塩? ロース? ホルモン?
物覚えの悪い私は好きなホルモンの部位名を覚えられず、
いつも「下に皮があって、上はぷりっとした脂身のあれ」と、ジェスチャー付きで注文する。
あれは皮:脂身=7:3で焼くのがmyルール。
さて。
この日、私はひどく消耗していた。
仕事に疲れ、健康を害し、吉井和哉は結婚し、福山雅治も結婚し、安藤政信は既婚であり、己の恋愛は霧の中 手を伸ばせど何もつかめず。加えて変態遭遇率の高さ。
だめ押しで、社員証をシュレッダーするなどのアクシデントにも見舞われた(これは自分が悪い)。タコ殴りである。
そのタイミングで「肉食べにいこうぜ!」ときたもんだ。
それは負傷兵の前に現れた看護師。あるいは寒さに震えるマッチ売りの少女が炎の中に見た天国の風景。
「お客様の中に、お客様の中にお医者さまはいらっしゃいませんかー!!」の叫びの前に現れた国境なき医師団なのである。二つ返事で飛んでいった。
友人に連れて行かれたのは新宿三丁目。
「パンとサーカス」
独特なネーミングセンス。扉をくぐるや心が踊りだした。
近未来! ネオン! サイバー! なんかちょっとエロい!
そしてここは、私の想像していた焼き肉屋ではなかった。熟成肉とジビエのコラボレーションを掲げる21世紀のレストラン。
メニューを見ると、載っているのは肉の部位…ではなく、生物名。一体何種類いるんだ…。
生ハム3種をお通しにいただき、乾杯。
メニューに記載の「獣肉のカルパッチョ」はどうやら肉を選べる様子。オススメに従い、我々はワニのカルパッチョを注文。あっさりした味で弾力があり、案外いける。
ちなみに一時ベトナムで働いていた友人は、当時食べたワニ肉と比較し、「臭みがなくてすごく食べやすい」と言っていた。
肉盛り3種
これも好きな肉を選べるシステム。5種盛りと迷いつつ、熟成豚、熟成鹿、鴨(確か)をチョイス。
クリスマス島の塩、マスタード、トマトとバルサミコのソースをつけて、味わう。
「クリスマス島の塩ってなんかエロい」と盛り上がった記憶があるのだが、今考えると何がエロいのか意味不明である。完全に店の空気にやられている。
肉の旨味が口に満ちる。これが熟成肉…!
鹿って初めて食べたけど少し羊に似た野生の味なんですね。なじみの豚はやはり美味しい。
カンガルーのカツレツ、若干の臭みはあるものの、上に乗ったトマトがナイスアクセント。
愛玩動物としてもなじみのあるうさぎだけれど、可愛すぎて食べてしまいたい、が叶って絶妙な気持ち。(美味しく頂きました)
熊やらくだも食べたかったのだけどこのときは仕入れがないとのことで断念。
店員さんの格好もなかなかである。
このあたりでワインがまわり、反比例してろれつが回らなくなる。
キッチュで異世界感溢れるコンセプトレストラン…という表現にとどまらない、ダイナミックな料理に満たされる胃袋。
豚と鴨以外は動物園でしか会ったことがない肉だったので、非常に新鮮な気持ちであった。
—– 私たち、別の形で出会えていたら、仲良くなれたかな? ——
ありがとう動物たち。君たちは私の血となり肉となり、私を強くさせるのだ。
食物連鎖を4段アップ。まだまだ頂上をめざす道は遠い。
余談ではあるが、トイレ利用時は注意が必要である。真っ赤な鏡張りで自我を失うので気を引き締めて挑むこと。すごくエロい写真が撮れるのだが、ここでは自重しておく。