「意識の低いデブ」だったオレが、「意識の高いデブ」になれたあの日の話。
オレは今、「意識の高いデブ」を名乗っている。ただ、もともと意識が高かったわけではない。意識の高いデブになるきっかけとなった日、それはある女性の存在なくしては語れない。
だから今日は、何一つ包み隠すことなく、オレが意識が高くなったきっかけの日について話してみようと思う。
オレは昔から太っていた。太っていたこともあってか、当時のオレは自分に全く自信が持てなかった。物事が上手くいかないことを全て「自分が太っているせい」にして誤魔化してきた。
「※ただしイケメンに限る」
しょっちゅうこの言葉を口ずさんでいた。
今だからわかるが、この ※ただしイケメンに限る という言葉を使う人に「自分を磨く努力」をしてる人はいない。更に批判を恐れずに言えば、この言葉を使う人は女性に対し「男を顔でしか判断しない」というレッテルを貼る傾向にあると思う。オレがそうだったからよくわかる。
そんな意識の低かったオレにも何故か仲良くしてくれる女性がいた。名前はそうだな、イベリ子としておこう。彼女は色白で肌がとても綺麗な女性だった。誰とでも別け隔てなく話す彼女はいつも沢山の仲間に囲まれていた。笑顔がとても素敵だった。オレが彼女を好きになるのにそう時間はかからなかった。
彼女と付き合いたい。
オレはいつしかそう思うようになった。しかし、当時意識が低かったオレは告白しても断られるんじゃないか、そうしたら今までの関係も破綻してしまうのではないか、そんなことが頭をよぎり、なかなか告白できずにいた。
そこでオレは考えた。
「エイプリルフールに便乗して告白すればいいのでは?」と。
我ながら野暮な考えだったと思う。ただ、「もし断れてもエイプリルフールのせいにできる」という保険が、当時オレの卑小で愚かなプライドを守る唯一の支えだった。そして3月31日、オレは彼女を誘い二人で飲みに行った。たとえエイプリルフールでも酒の力を借りないと告白できそうになかったからだ。
いつものように笑顔で話してくれる彼女。彼女の話に合わせ相槌を打つオレ。あっという間に楽しい時間は過ぎ、時計の針は24時を回る。そしてオレは日付が変わったタイミングを見計らい、意を決して
「オレと付き合ってくれませんか?」と彼女に言った。
彼女は一瞬驚いた顔をしたが、すぐにエイプリルフールであることに気付いた。
そして、苦笑した後「はい」と返事をしてくれた。
他愛もない茶番なやりとりだったけど、オレはこの時初めて女性から受け入れられた気がした。こんな些細なことがきっかけだったけど、その時から少しずつ意識が高くなり、今日に至るんだと思う。
そして、意識の低いデブだったあの日から10年が経った今、彼女はまだあの時の茶番に付き合ってくれているんだけど、
それはまた、別のお話で。